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わたしの敬愛する、最高にエキセントリックなお客さまたちのストーリー。【my lovely simple life in London vol.9】

【my lovely simple life in London vol.9】ここロンドンで「彼、彼女、はエキセントリックだからね」といわれると、 それは「筋金入りで風変わり」という意味。でもそこには、いろんなレベルでの愛情がこもっている。

「Eccentric(エキセントリック)」という言葉がある。

 

私の好きな言葉の一つなんだけれども、風変わりな…とでもいったらよいのかしら。

 

 

こちらで、「彼、彼女、はエキセントリックだからね」といわれると、

「筋金入りで風変わり」という意味、でもそこには、いろんなレベルでの愛情がこもっている。

 

 

小さなサーフェスデザインスタジオをグリニッジの閑静な住宅街にオープンして、10年になろうとしている。

アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、そして母国日本にも素晴らしくエキセントリックなエージェントさんに恵まれ、仕事をさせていただいているのだけれど、

ありがたいことに ここグリニッジのローカルのお客様とのお付き合いも、とても楽しくやらせていただいている。

 

今日はその中でも素敵にエキセントリックなお客様のお話をしてみようと思う。

 

 

 

ひとりめは、クレア。

 

クレアは、もう随分昔からのお客様だ。

2007年に未亡人になってしまったクレアが、その数年後に私達に依頼した最初の仕事は、ご主人のキアのオフィスだったお部屋のブラインドのデザインだった。

 

 

キアはとても有名な彫刻家だった。そのキアのスケッチを山盛り抱えて、彼女はスタジオにきてくれた。

私達はその貴重なスケッチを一つ一つ綺麗に写し取り、二人が暮らしたグリニッジを中心にしたロンドンの地図を真ん中に配置し、彫刻のスケッチを回りに囲むように施して大きなタペストリーのようなブラインドをデザインした。キアが好きだったというオークツリーの葉もデザインに取り込んだ。

 

そのファブリックができあがり、プロの手でブラインドとなり窓にかかった日。

クレアは私達をよんでくれて、うれしそうに見せてくれた。

 

「キアのオフィスはこのままにしておくの、私の心がきまるまで、ここはキアのオフィス。こんなパーソナルで特別なデザインをありがとう。きっと彼も喜んでくれてると思うよ」とちょっと泣きそうな顔でにっこりしてくれた笑顔を今でも忘れない。

 

 

それから、クレアは大のお風呂好き。

そんな彼女が「ハンサムなカウボーイをバスタブからながめるのもいいよね」と選んでくれたワイルドウエストトワルも、すっきりしたブラインドに仕上がった。

 

アートギャラリーのキューレーターをしている彼女は、とても奇妙にいろんな物を使ってバランスをとる。

ストーリーのあるものが大好きだという。

 

 

東日本大震災の時に、チャリティに使うためにデザインしたファブリックもすぐに買ってくれた。

 

そして、最近そのファブリックは彼女のベッドルームのカーテンとブラインドになった。

大きな魚が泳ぐ姿をデザインしたそのファブリックで飾られた窓の向こうにはクレアの自慢の庭も見える。

 

「だって、被害にあった人、被害にあった動物たちを元気にするためにデザインしたものでしょう、私は一目惚れだったの。頑張ろうって思えるじゃない」というのが彼女の理由だ。

 

 

今私達は、クレアのリノベをしたばかりの新しいバスルームの窓ガラスにはるための、フロストスティッカーのデザインをしている。彼女が選んだのは、スウィミングインザシー(通称クジラ柄)で、それを彼女の窓に合わせてデザインをいれこみ、何件ものメーカーさんにふられながらやっと見つけた、若くってやる気満々のブライトンのメーカーさんと一緒に作っている。

 

写真は柄の様子を見るために紙の上にプリントをしたものだけれど、出来上がりが楽しみだ。

 

 

「勿論ご近所に私の裸をおみせしなくってもすむようにするのが一番の目的だけど、くじらやタコの形に切り取られた空をバスタブの中からみるってのもたのしそうじゃない?」と子供のような笑顔でうれしそうにしてくれる。

 

ご主人の作品に囲まれて暮らすクレア。時々寂しそうにキアの話をするけれど、いつも話の終わりは笑顔で終わる。

とても魅力的な人だ。

 

 

 

エキセントリックなお客様、ふたりめは、ジェーン。

 

ジェーンは、グリニッジ界隈でも最も大きなお家の一つに暮らすコラムニストだ。

いつも新聞や雑誌を腕一杯に抱えてやってくる。スタジオで話す時も電話はひっきりなしにジェーンを呼ぶ。

 


「あのね、ベッドルームから見える大きな木と、毎年大枚はたいて雇うガーデナーが世話をしているフジの花の風景にあう壁紙が欲しいのよ」ときてくれた。

 

で、選んでくれたのがリピートがやけに大きいハイド&シーク(かくれんぼ)という柄。

ちょっとパールがかっているので、光の加減で優しく光る壁紙だ。とても気に入ってくれて、クッションも欲しい、ランプシェードも欲しいと、どんどんコーディネートしてくれた。

 

 

出来上がったからみにきて、といわれ友だちのフォトグラファーのシボーンと見にいったら、大きなベッドや、ソファにパジャマや新聞、マガジンが散乱していた。

 

その前でニコニコ笑顔で窓を開け外を指差し、「ね、いいでしょ。ぴったりだよね」というジェーン。

なんとかその散らかりを避けながらシボーンが撮った写真にはとても静かな優しいベッドルームが写っていた。

 

 

 

エキセントリックなお客様、さいごはケイト。

 

ケイトは公務員さん。突然スタジオにきて、『フォレストオブディーン』という大きな角の鹿がお行儀よく並ぶ壁紙をさっと選び、オーダーをしてくれた。

 

ケイトはとても優しい雰囲気の女性で、庭仕事が大好きだという。

 

数週間たって、私達のFacebookのページにメッセージが届いた。

それはケイトからで、「やっと、壁紙を貼る事ができたわ!これでうちの物置が町中で一番素敵な物置ってことになるわ」というメッセージとともに写真が添えられていた。

 

 

そういえば、「庭仕事が好きで、ガーデンにいる時間が長いから、シェド(物置のような小さな小屋)に壁紙でも貼っちゃおうかなって考えてるの」といっていたような。でも、多分ジョークだって一緒に笑ったような。

 

え、本気だったの?と、とても驚いた。

 

最近ケイトがスタジオにきて「ほら、私ったら、けちってオーダーしたじゃない、壁一つはべつにペンキで塗るだけでもいいかなっておもってたのよ、でも何年経ってもやっぱり気に入らなくって」と、その壁用に同じ柄をオーダーしてくれた。

 

プリントし上がった壁紙をとりにきた日、「あーこれで、椅子の向きを考えて座らなくってすむわ、どっち向いてもこの壁紙がみえるんだものね」と、うれしそうにしていた。

 

 

 

こんな風に自分が暮らしたい空間を自由奔放に作り上げるお客さんは、話をしていても面白い。

 

びっくりするような事もあるけれど、それぞれとても真摯なのが共通点。その真摯さがきっと彼らをエキセントリックにしていくのだと思う。

 

そしてそんなお客様とのおつきあいが、私達の仕事にも反映していくのだと思う。

もっともっと鍛えられて、いつか私もイングリッシュエキセントリックな一面を持った日本人になりたいなあと思ったりしている。

 

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