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フランス伝統菓子

 日に日に春らしくなってきているパリ。日本の桜が恋しいですが、こちらフランスでも桜に属するアーモンドや杏子などの花が満開に咲き誇り、街が桃色に華やいでいます。午後の気温23度の予報が出た日、友人の誘いでパリ5区にあるモンジュ広場周辺の散歩に出ようというので街歩きスタート。

 

パリ5区はフランスで一番の大学であるエコール・ポリテクニックや日本からも多くの留学生が通うソルボンヌ大学がある学生街。植物園やリュクサンブール公園など緑豊かな環境で、お洒落なパリジャンが住む閑静な住宅街でもあります。お肉屋さんなどでお買い物をしているマダムも品があり、雑誌に出てきそうなスタイリングでおしゃれです。

 

前置きが長くなりましたが、モンジュ広場といえば必ず寄りたい幾つかのグルメスポットがあります。今日はそのひとつである伝統菓子のお店「Le Bonbon au Palais(ル・ボンボン・オゥ・パレ;「キャンディのお城」という意。)をご紹介します。外観は手芸屋か文房具の専門店を思わせる感じですが、ドアを開けた瞬間から甘い世界に包み込まれて、そこからはもう後戻りはできない気分になります。

 

キャンディのお城のオーナーはジョルジュさん。パリにいる伝統菓子博士のひとりです。私がお邪魔したこの日はバカンスでご不在。残念!店内は50年代の学校をテーマに、アンティークの文房具や黒板、学校の壁に貼ってあった身体ポスターなどが飾ってあり、懐かしい気分にさせてくれる空間です。童心に還ってウキウキしながらお菓子を選ぶご年配者も多いそう。内装はすべてジョルジュさんがされてるそうです。アンティークに詳しいようで、本気で欲しい置物なんかもチラホラ飾られています。

 

 


 

4月のフランスはパック(イースター)の月。パックの伝統行事といえば、家の庭に鶏や卵型のチョコレートを隠し、子供達がそれを探し出すというもの。まるで宝探しですね。パックの3週間前からパティスリーやショコラティエにはパック用チョコレートが店内のほとんどを埋め尽くし、各家庭では今年はどこのショコラティエの卵を購入するかという家庭内会議が繰り広げられます。

 

そういうわけで、こちらの店内も卵型や魚型、鶏などの可愛いパック用チョコレートがリヨンから届き(パックの前しか買えない限定もの)、敷き詰められてたくさん並んでいました。もう宝石箱みたいですね!

 


 

ボンボン・オゥ・パレではアルザス、ロワール、ボルドー、リヨンなどのフランス全国各地から伝統菓子や郷土菓子がセレクトされており、その量は数え切れなほど。店内に入ると何を買っていいのやら、目移り必至でございますので入店したらまずひと呼吸おくことです。

 

さ、心を落ち着かせ、、、今日は何を買ってみようかな。吟味します。

お店には日本人のお菓子の先生がおり、丁寧にお菓子の歴史、材料、特徴などを解説してもらえるので安心して選べます。

 


 

説明を聞くだけでお菓子の知識が深まり、非常に勉強になります。表面で知ってるだけのことって多かったな、と反省。

フランスの伝統菓子や郷土菓子は、日本の和菓子と相通じるところがあり、自然な材料を使用しているのはもちろんのこと、産地の特色を活かした素材選びや、伝統工芸品など歴史にまつわる名付けがされていたりします。お菓子ひとつでいろいろうんちくが語れるなんて感動です。では実際に、どんなお菓子に驚かされるかというところに迫ってみましょう。

こちらはプラリネのコーナーです。綺麗ですね!全部に物語がありますから驚きです。

 

 


 

プラリネとは、アーモンドやノワゼットなどのナッツ類にお砂糖を混ぜてキャラメリゼしたもので、シャリシャリとした食感が特徴です。多くはチョコレートと砂糖でコーティングされています。カラフルで可愛いですね。アーモンドやノワゼットをコーティングしたドラジェは優しい甘さで子供達にも人気ですが、フランスでは結婚式のお土産として渡す縁起物として古くから親しみのある有名な伝統菓子です。すべてナチュラルな素材を使って作られています。私はこの棚からノワゼットのドラジェとプラリネナチュール、プラリネローズ、ソーテルヌ(白ワイン)につけたレザンのチョココーティングしたレザンドールを購入。就寝前のお酒のお供にしていますが、止まらなくて危ないお菓子です。

 

続いて、珍しい伝統菓子を幾つかご紹介します。

 

こちらはロワール地方アンジェの瓦屋根のチョコレート菓子「Quernon d'Angers(ケルノンダンジェ)」。1966年に伯爵夫人が特別に伝統菓子マイスターに作らせた郷土菓子。写真などでアンジェの風景を覗いてみるとわかるのですが、この地方の家々は薄青紫色の屋根瓦が用いられる特性があります。その瓦をイメージして名付けたチョコレートがこちら。瓦味ではありません。中にはキャラメリゼされたヌガティンが入っており、優しくチョコレートで包まれた丸みのある味わいにシャリシャリ感が加わったリズミカルな食感です。それにしても美しい色ですね。

 


 

こちらはメレンゲのお菓子「Flocon d'Ariège(フロコンダリエジュ)」。ミディ・ピレネー県の冬山雪景色をイメージした真っ白な雪の結晶を模した繭のようなお菓子です。美しい白さ!中にプラリネ・ノワゼットを柔らかいメレンゲで包み込んだ郷土菓子です。シュッと程よい口溶けで、メレンゲらしからぬさっぱりな後味に、え!何これは!驚きの味です。食べる前は従来のヌガー的な歯にくっつく類のキャンディだとナメてました。ごめんなさい。すごく感動させて頂きました!

 


 

そしてこちらが「リヨンのクッション」というフランスが誇る伝統菓子「Le Coussin de Lyon(クサンドリヨン)」。ヴォワザンというリヨンの老舗伝統菓子店のもの。パットダモンド(マジパン)にオレンジリキュール風味のチョコレートガナッシュを包み込んだ、忘れてはいけない感動必至のフランス伝統菓子です。やはり嫌な甘さは全くなく不思議なほどの品の良いさっぱり感。

 

このお菓子はリヨンの歴史に深い関係があります。1643年、フランスにペストが大流行しました。どうにかして沈静させたいという思いを抱いた巡礼者たちが、リヨンの丘の上にある教会に7リーヴル(フランスの重さの単位;ポンドと同じ)もの重さのあるキャンドルと一枚の金貨をリヨンの伝統工芸品である絹を使った緑色のクッションの上に置いて、毎年祈りを捧げ続け、沈静させたという慈悲物語が背景にありました。日本でいう「お供え」に縁起を担いで生まれたお菓子です。そう思うと中のチョコレートガナッシュがあんこに見えてきてしまいすが。フランスにも日本同様に、歴史とお菓子の結びつきがあることは大きな発見です。何も知らずして口にほおばるのは少々もったいなく、裏話を知りながら頬張りたいものですね。

 


 

まだまだ沢山美味しいものがあるのですが、書ききれません!

続いてフランスの駄菓子ギモーヴ(マシュマロみたいな生メレンゲ菓子)です。

お店には2種類のギモーヴあるのですが、私はメレンゲ率が70%(通常は30%の配合)とフワフワ感の高い方を試しました。

 

フレーバーはレモン、マダガスカル産バニラ、イチゴなどありますが、中でもひときわ驚きの美味しいフレーバーはオレンジの花。これは珍しい!すっきりとした味わいでギモーヴの甘甘しさがありません。これは紅茶にぴったり!

このギモーヴはトップシェフのアラン・デュカスが「一番美味しい!」と言ったそうですよ。ここのギモーヴは他のとは全く別物で私も一口で虜になりました。

 


(外の桜が満開ですね!)

 

ラップキャンディも奥が深いのですが、ますご紹介したいのはこちらのキャンディ。これは世界初の二重構造キャンディだそうです!ここの老舗飴屋さんは一度火事に遭い、二重構造ができる機械を失ってしまったそうなのですが、再度復活し有難いことにまた我々の元へ戻ってきてくれたのだそうです。アクシデントにも負けずにカムバックできるのは根強いファンのおかげのようです。お味はベタベタしなくて甘さすっきり。美味しい!!ついついもう一個!と言いたくなります。まだ続くので、飴はこの辺にしておかないと口の中に空きがありません。

 

 


 

さあ、まだまだお菓子の宝探しは終わりません。いろいろ味見をさせてもらったのに全然口の中が甘ったるくないことに驚きながら、さらに腕めくりをして次のスポットへ移動します。

 

実はしばし前にオーナーのジョルジュさんが大好物であるビスケットのセレクトショップをオープンしていました。もうリヨンの伝統菓子とか忘れそうですが、しっかり記憶し、次の説明を聞きます。

 いざ入店!

天井からカラフルな可愛いランプがたくさんぶら下がってます!パリっぽいインテリアですね

 


 

店内にはプロヴァンスやアルザス地方などのビスケットがたくさん!またまた迷ってしまいます。

まずはアルザス地方、ハードタイプのサクサクビスケットの棚です。

 


 

今回初めてだったので一つづつ購入。どれもサクサク、期待を裏切らない懐かしい素朴な味わいです。

しかし、マニア向けなのは反対側の棚にあるアルザス地方郷土菓子ぬれ煎ならぬぬれビスケット。しっとり系のお菓子で少しオタクな域に突入です。パンデピスを思わせる重ためのナッツ類が混ぜ合わさったしっとり生地に、アイシングやじゃりじゃりの砂糖のキャラメリゼが上部に施されているビスケット。これは、パンデピスなどのパウンドケーキとビスケットの間という感じでしょうかね。やっぱり「ぬれビスケット」ですね。

 


 

こんなにビスケットの奥が深かったなんて。。。まだまだ知らないことってあるのね。一つ一つ物語があるので、全部食べてみてもっと勉強して出直します!

可愛いディスプレーで何でも美味しそうに見えてしまいます。

 

そして元祖マカロン。パリではもう一軒購入できるところを知っていますが、ここにもあったなんて!嬉しい発見です。この青い箱の元祖マカロンは、ボルドーのサンテミリオンにあるお菓子屋さんのもので、13世紀に作られたおやきのような甘くない焼き菓子から進化してきたもの。アーモンドと砂糖の素朴な味で、シートに一つづつマカロンが貼り付けられているユニークな印象です。カスタードクリームやアイスクリームを挟んで食しても美味しいですよ。今も17世紀から変わらないレシピで作り続けてるなんて、素晴らしい伝承です。

 

 


 


 

どれも箱が昔から変わらずで、ノスタルジックな気分にさせるクラシックさがいいですね。捨てられません!ジョルジュさんのお宝コレクションでもあるアンティークのビスケットボックスが棚上に見られるのも楽しい店内です。

大好きなマドレーヌもいろいろ有名な美味しいところがありますが、スタッフのお姉さんのうんちく解説にやられて試してみました。

 

うん、これだわね!私も今日からこのしっとり系のジャネット派で!少し日持ちもするのでお土産にもぴったり!パリで買うお土産マドレーヌはこれに決まりです。

 

 


 

あとはプロヴァンスのビスケットやボルドーのマカロンなど、まだまだ紹介しきれません。

お菓子の先生、本日は長く接客していただき、どうもありがとうございました!

この続きはまた今度、お楽しみに。

 

今まで数あるお菓子屋さんへ出向いても、ある程度は知ってるつもりでいたフランスの伝統菓子の世界。実は、そんなに甘い世界ではないと知りました。もっと感動しながら有難く食するためにも、より一層踏み込んで行かなければと思い直しました。フランス菓子は本当に奥が深く、一つづつ説明すると一冊の本が出来上がってしまうほどの内容になります。フランス革命前のフランス史やフランス師弟制度などを掘り起こさなければいけませんが、私はこういう立ち入り禁止区域に入って他方から文化を再認識することが楽しみのひとつなので、もっと入って行きたい好奇心が掻き立てられました。これからパティシエを目指してパリやリヨンに来る留学生も多くいると思いますが、こんな角度からの入り込み方もなかなか個性的で良いのではないでしょうか。

 

Le Bonbon au Palais(ル・ボンボン・オゥ・パレ)

19 rue Monge 75005 Paris France

http://www.bonbonsaupalais.fr

 

文;福島 明子(パリ在住コーディネーター)

https://www.instagram.com/akiko.fukushima/

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