【ONKULの工場見学 vol.2】〈バトナー〉のニット

ブランドを深掘りして紹介する、本企画。今回は、ニットの素材や縫製に関して、業界内でも厚い信頼を集めるブランド〈BATONER〉をクローズアップ。製作現場を訪ね、ニットアイテムに懸ける熱い思いを伺いました。

 

その秘密は厳選素材と職人技。手間のかけ方にあり。

日本のニットの産地、山形県寒河江市。この地に工場を構える「奥山メリヤス」は、上質な天然素材にこだわりを持ち、素材の良さとデザイン性を活かした独自の縫製技術でその名を轟かす老舗ニットメーカーである。創業1951年。代表を務める奥山幸平さんは、今年の夏、三代目に就任した。

「子どもの頃、実家の裏にニット工場の倉庫があって、そこが遊び場だったんです。機械やマネキンが面白くてね。よく秘密基地にしていました。学生時代は服に興味があったので、ここでバイトをしていたんです」その後、正式に「奥山メリヤス」に就職し、営業マンとして腕を振るうようになる。しかし当時は、コスト削減と成長著しい技術を求めて生産拠点をアジアに移転することが当たり前になった時代。日本の服作りにも影響が及び、環境が大きく変わったという。「元々ここにも200社余りニット工場があったんですが徐々に数が減り、今は数社だけなんです。縫製はある程度できればいい、安くてクイックであることを求められましたね。良いものを作れるからこそ、長らく葛藤がありました。海外の方が安く作ることができますが、やはり日本のファクトリーブランドを大事にしたかったんです」そして2013年、自身のブランド〈BATONER〉を設立。メンズ・レディースともにデザインから提案し、日本の職人技が宿るニットアイテムを打ち出した。

 

01_ニットに用いられる糸は、同じ寒河江市にある紡績工場で作られる。国内有数の技術によって紡がれる良質な天然の糸。

 

〈BATONER〉のニットアイテムは、ニッティング、リンキング、ステッチング、プレシング、チェッキング、大きく分けると5つの工程によって完成する。こだわりの厳選素材と世界でも有数の機械に加え、これらの工程ひとつひとつを職人が自らの手で丁寧に行うことでクオリティの高い製品ができあがる。

「聞き馴染みがあまりないかもしれませんが、ゲージという言葉は編み機に使われる針の単位を表します。1インチの間に何本の針があるかを意味しているのですが、ここには一番低いものと一番高い編み機があるんです。様々なゲージの針を用いることで、見た目がしっかりと重厚感のあるローゲージニット、着心地が軽やかなハイゲージニットなど、バリエーション豊かに作ることができます」

 

02 _ それらの糸を使い、ニットの原型となる各パーツを編み上げる。

 

春夏のカットソーから秋冬のニットまで、季節を問わず幅広い製品ができるのも特徴だ。糸のもととなる素材には、カシミア山羊から採れるカシミア。羊やアンゴラ、アルパカといった動物繊維のウール。植物の綿からできるコットン。そして亜麻を原料とするリネン。数多くの種類がある中、これらの素材をしっかりと吟味し、使い分けることでニットに様々な表情を持たせることができる。

 

03 _ 前身頃、後ろ身頃、袖、襟といったパーツをひとつひとつ手作業で繋ぎ合わせる。細かい作業かつ時間もとてもかかるが、丁寧に縫製することで継ぎ目が目立たず、 正確な柄合わせが可能。

 

また、スタッフの育成に励み、常に新しい方向性を模索している点も見逃せない。

「代表を務める前は、いい職人はみんな60代や70代。彼らが引退すると、技術が途絶えてしまいます。それをなんとか防いで、若い人にも技術を継承してもらいたい。今は若いスタッフを増やして、伝統や技術を守っていこうと努めています」ブランドとして成長を遂げながら、伝統的なモノ作りも脈々と受け継がれているのだ。

 

04_ ニットを編む上で必要不可欠な作業が糸始末。過程で必ずはみ出てしまう糸を編み地に戻したり、余分な糸をカット。綺麗な見栄えかつ丈夫なニットに。

 

05_形ができあがったら、糸の組織を水で湿らせ、熱や圧力を加える縮絨作業へ。様々な 型枠を使ってアイロンをかける。

 

06_意図したデザインや風合いに導く職人の感覚的な仕上げ作業。また、製品にしてから洗いにかける手間 ( ウォッシュ加工 ) も忘れない。少量をドラムで ゆっくり回すことで、傷めることなく素材本来の風合いを取り戻す。最後に、人の目で一枚一枚検品を行い、完成。出荷の準備へ。

 

工場の裏から見える開放的な風景。自然豊かなその場所で〈BATONER〉のニットは作られる。

 

「今は共感していただいているブランドのショップで取り扱っていますが、いずれは東京と山形に、より具体的な世界観をお客さまに伝えられるよう直営店を出すことが夢です。また、ファクトリーブランドや山形の魅力も伝えたい。そして、日本が世界に誇るニットウェアブランドとして確立していければと思っています」ニットアイテムに対する深い造詣を武器に、常に新しいものを紡ぎ出す奥山さん。どこまで進化を遂げるのか? 今後の展開を期待せずにいられない。

 

 

SHOP DATA

住所:山形県寒河江市赤田156奥山メリヤス 電話番号:0237-86-5378

URL:https://www.batoner.com