ワインセラーをキャンバスに、伝統と個性をミックス【いろどりのチェコ vol.21】

9月も半ばを過ぎ一気に風が冷たくなった。

夏が完全に去ってしまったのは寂しいが、代わりに良いこともある。暑過ぎる夏の間は控えていたサイクリングを再開できることだ。

チェコには快適なサイクリングロードが縦横無尽に走っている。近場であれば公共交通機関よりも自転車の方が便利なほど。

ひんやりとした空気と秋晴れの空が気持ちの良いある休日、特に予定のなかった夫と私は、住んでいる街から延びているサイクリングロードの一本を終着点まで行ってみることに決めた。そこに何があるのかは知らぬまま。

1時間半のサイクリングの末にたどり着いたのはムチョニチェ村というワイン畑が広がる小さなワインビレッジ。坂道を息を切らせて上った甲斐あって丘からの景色とそこに吹く風の気持ち良さは完璧だった。一ヶ月前なら暑過ぎただろうし、一ヶ月後なら寒過ぎるだろう。

村には、ワインの産地らしくセラー(貯蔵庫)ばかりが集まった集落があった。
そのセラーの意匠がそれぞれ個性的でたまらない可愛さだったので特に気に入った数軒を写真でご紹介したい。

定番の青と白の壁に暖色の瓦

ワインテイスティングに使う道具を描くというアイデア

壁を這うツタの配分が見事な一軒

ツタにすっぽりと覆われたのもイイ

民族衣装とフォークロアダンスの絵

りんごのなる門

ワイン好きのうさぎさん

地味ながら配色が絶妙で素晴らしい

どれも手が込んでいるので一見民家のようだが、あくまでも貯蔵庫であり人が住んでいる訳ではない。たとえ住めるほど広く立派だとしてもだ。
大半のセラーオーナーは村の中の別のエリアに家を構えており、休日にセラーを訪れる。庫内を片付けたり、ワインの様子をチェックしたり、リノベーションしたり。日曜大工のようにセラーいじりが趣味の一貫なのだ。

夏の終わりがハーベストシーズンなので、9月は収穫したばかりの葡萄からワインを仕込む時期。初秋の限られた期間にだけ飲める発酵途中のワイン(ジュースのようにフルーティーでとても美味しい)が人気で、庭にテーブルを出してワイングラスを片手に寛ぐ人々もいる。それはもう、うっとりとするほど穏やかな秋の午後だった。

運に任せて辿り着いた先にあった愛らしい村。田舎暮らしもまだまだ探索場所に尽きることはない。

 

文・写真:Noriko Naniwa
Blog:www.howtobeczech.com