ミステリアスな絵画が印象的なイギリスが誇る現代の画家 ピーター・ドイグの日本での初個展

2月に行われたピーター・ドイグ展の内覧会に行くチャンスがあり、ひと足早く展示会を堪能してきました。彼のカラフルでミステリアス、新しいのになつかしい不思議な世界を堪能してきました

展覧会の初日の前日、ラッキーなことに内覧会に行くチャンスがあり、いそいそと鑑賞に行ってまいりました。(会場である「東京国立近代美術館」は2月29日から閉館中です。)日本初の個展で、とても規模が大きく、初期の作品から最新作まで展示されている展覧会です。

 

ピーター・ドイグ(Peter Doig)は、イギリスの画家で、「ロマンティックかつミステリアスな風景を描く画家です。今日、世界で最も重要なアーティストのひとり」と言われています。(東京国立近代美術館の案内より)

 

案内の看板は「ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ(Gasthof zur Muldentalsperre)」2000-02年

 

開場の時間が来るまで看板の絵を見ながら、「幻想的」などと思いながら待っていました。

 

開場の時間となり、音声ガイドを借りて、自由に見学です。展覧会は、3章の構成になっています。第1章は「森の奥へ Into the Woods 1986〜2002」。ピーター・ドイグはロンドンで美術を学び、美術誌に取り上げられたり、ターナー賞(イギリスを拠点とする現代美術作家を対象に贈られる賞)にノミネートされて、注目を浴びるようになりました。第1章は幼少期を期したり、美術学校を出て修士号をとるまで一時滞在していたカナダが主題となっているといことです。

第2章は、「海辺で By the sea 2002〜」。2002年から幼少期に暮らしたことのあるトリニダード・トバゴへ活動の拠点を移しました。その前後から、海辺のモチーフが多くなっていたようですが、展覧会でも、第1章の少し暗く重い感じがする森の中から、テーマは日常生活でそこに何かイメージを重ね合わせている絵画が展示されています。

 

第3章は、「スタジオのなかでーコミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ In the Studio-studiofilmclub as a Community 2003〜」。これは、スタジオフィルムクラブというピーター・ドイグが友人のチェ・ラヴレスと始めた映画上映会の周知をするために描かれたドローイングということで映画のタイトルとイベント名(Studiofilmclub)が書かれているのですが、単なるポスターとは違っていて、選ばれている作品にピーター・ドイグの趣味を垣間見ることができます。

 

第1章の作品は、自然の中にいる人物が描かれている絵画が中心ですが、多くの人物は「山の風景のなかの人物」のように、人とわかるもののかなり変形されていて、ミステリアスです。

 

「山の風景のなかの人物(アイ・ラブ・ユー、ビッグ・ダミー) Figure in a mountain landscape  (I Love You Big Dummie)」1999年

 

海辺の様子も、人物はいるのに、生きている人というより、少し亡霊みたいな奇妙な気持ちになります。左の船に乗った人の絵は、水面に写って、上下が対象なのに、人は写っていなくて、不思議。この絵を見たときはマーク・ロスコを思い出しました。

 

左「スピアー・フィッシング Spearfishing」 2013、 右「夜の水浴者たち Night Bathers」2019

 

この2枚の展示は、色のコントラストが印象的でした。左の「夜のスタジオ」の床の赤と右の「ピンポン」のラケットの赤、ふたつの作品ともに人物が描かれていますが、顔はぼんやり。はっきりしているのに、人はぼんやりしている、それは、人の心はわからないんだ、という言っているように思えました。

 

左 「夜のスタジオ(スタジオフィルムとラケット・クラブ) Night Studio (STUDIOFILM & RACQUET CLUB) 》」 2015/ 右「ピンポン Ping Pong」 2006-08

 

「馬と騎手 (2014)」は色合いがぐっと闇のような色味で、赤い枠の四角は行く先に待ち受けるものを表しているのか、騎手の頭には角があるけれど、人の中にある悪魔を表しているのか。そんなことを考えながら見ていても、結論は出ません。(だから、もう一度見に行きたい。)

 

「馬と騎手 Horse and Rider」 2014

 

黄色が目を引く「ポート・オブ・スペインの雨」は、不思議なことに本来檻の中にいるはずのライオンが檻の外を自由に歩き回っている様子が描かれています。黄色い檻の左側に薄く人も描かれています。本来自由に行動している人間が薄く、檻の中にいるライオンが力強く描かれてます。ピーター・ドイグは誰か(何か)をライオンに重ね合わせて、自由に行動ができる日が来るようという希望を表現しているようにも見えます。

 

「ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク) Rain in the Port of Spain (White Oak)」 2015

 

 

そして、第3章 「スタジオのなかでーコミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ In the Studio-studiofilmclub as a Community 2003〜」のパートへと進んでいきます。ここは、ピーター・ドイグの描く映画の世界がポスターのように並んでいます。このフィルムクラブは、文化的サロンのような形式のようで、上映後に作品について話し合ったりするコミュニティの役割を果たしているようです。

 

左から2枚目は、デビッド・リンチの「ブルー・ベルベット」が5月1日に上映されることを知らせています。切り落とされた耳を拾うことから事件に巻き込まれるというストーリーを思い出しました。

 

 

そして、なんと、日本の映画も取り上げられていたようです。

 

盲目の侠客の映画「座頭市」の絵が。この絵からすると、髪の色が金髪なので北野武さんの「座頭市」ですね。目を赤くすることで、凄みがましていて、盲目であることがわかります。

 

 

 

そして、展覧会のお楽しみ、グッズコーナーへ。

 

気に入った絵画の絵葉書があると、必ず、購入することにしていて、ただ、主催者と私の気に入る具合が必ずしも一致しないので、欲しかった物があるかどうか、いつもドキドキします。

 

今回は、こちらを購入。

 

右上から時計回りに
「ラペイルーズの壁 Lapeyrouse Wall 2004、「Pelican (Stag) 2003」、ポートオブスペインの雨 Rain in the Port of Spain 2015」、「無題 Untitled 2015」、フィルムクラブから「TOKYO STORY」

 

会場を出るときに一人の外国人の男性とすれ違ったのですが、それがピーター・ドイグ本人で、内覧会の後に予定されていた記者会見の前に、ショッピングから戻ってきたところだったようです。

 

ピーター・ドイグ展をはじめとする開催期間中であるべき展覧会が再開される日が、待ち遠しい思いです。

 

 

ピーター・ドイグ展会場
東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
会期:2020年2月26日(水) ー 6月14日(日)

《2月29日から臨時休館中》

https://peterdoig-2020.jp/