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甲斐みのりの隙間の時間:今回のテーマは「心と身体を落ち着かすサプリ的アイスクリーム」

雑誌やwebメディア、書籍など、様々な場所で活躍する文筆家、甲斐みのりさんによる日々の気づきを記したエッセイです。

 

 

上京して仕事をはじめたばかりの20代の頃、毎晩のようにアイスクリームを食べていた。仕事でも、人とのつながりでも、ただ普通の生活も、辛かったり悲しかったり寂しかったり心細かったり、胸がきゅっと苦しくなると、スーパーやらコンビニに立ち寄って、冷凍ケースからアイスクリームを選ぶ。溶けてしまわぬようにと家路を急ぐこともあれば、途中の公園のベンチに座り外で食べることもあった。それは夏だけでなく、秋も冬も春も。たいてい空は暗くなっていたから、鮮やかなミントの水色も、氷の粒が光るバニラやミルクの白色も、夜にまぎれて随分おとなしい色に見える。公園でアイスクリームのあとは、甘い余韻が頭の先へ届くまで、わざと遠回りしながら、大きな歩幅で足早に歩いた。

 

そんな日々の中、昔の日記に書いてあった言葉。

 

「アイスクリームの鎮痛剤」

いろんなきもち、アイスクリームでごまかす

冷たいのと甘いのとで

アイスクリーム1個ぶん

ぜんぶ忘れてしまうの

アイスクリームは私の鎮痛剤ね

 

あのときは、ひたすら食べたアイスクリームの数だけ、痛みを抱えたつもりでいたのかな。感傷がアイスクリームに向かうとは。若さだったなあとくすぐったい。

 今はただただ、食べたい、涼みたい、愛らしい色や形が愛おしい。食いしん坊な少女時代と同じように、余計な思いなどなく、ただ好きな気持ちだけでアイスクリームと向き合えている。

 


秋田の「ババヘラアイス」を、秋田県のアンテナショップで。


 

中野で食べた8段ソフトクリーム。


横浜の「象の鼻テラス」にある、ゾウノハナソフトクリーム。


 

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