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今回のテーマは「日記と向き合って。。」【甲斐みのりの隙間の時間】

雑誌やwebメディア、書籍など、様々な場所で活躍する文筆家、甲斐みのりさんによる日々の気づきを記したエッセイです。

 

 

 「痛みに耐えるのは愚かだ」とは、ミランダ・ジュライ監督映画『君と僕の虹色の世界』を観ながらメモしたセリフ。そのあと「いい靴を買えば幸せになれる」と続くのだけれど、映画館でスクリーンを見つめたままバッグの中からボールペンを取り出し、手の甲に手探りで最初の言葉だけを書き留めた。

 10代の頃の日記の宿題を思い出す。日記は国語のテストの答えと違って正解などないはずなのに、いつのまにかこう書くべきと、まだなにも起こらぬうちに先々の筋を読むようになった。家族や友だちとのつながり。素直な自分。ぼんやり察する決まりごとの中で一日の流れを記すだけではつまらない。つい気構えて特別な出来事を探ろうとすることも。次第に日記が苦手なものに変わりつつあるその手前で、ふといつもと違うふうに書いてみようと思いたち、好きな歌の歌詞とともに、その歌に描かれる主人公の人物像を綴ると、つらつら言葉が溢れ筆が進んだ。普段と違う日記、先生はなんて言うだろう。内心穏やかでなく返ってきたノートを開くと、先生からは気が抜けるほどなんてことない肯定的な一言。自意識過剰にこうあるべきと、勝手なルールを作っていたのは私自身。シンプルに、好きなことだけ書けばいい。やっとふっと肩の力が抜けた。

 「痛みに耐えるのは愚かだ。いい靴を買えば幸せになれる」

 痛みとまでは言わずとも、苦手なことや思い込みはできるだけ手放して、好きなことを積み重ねられますように。今こそ思う。

 

 


 

『君と僕の虹色の世界』のサウンドトラック。

 

 


 

ミランダ・ジュライが紡ぐ16の物語『いちばんここに似合う人』

 

 


 

20代の頃の散文集。『ジャーナル』と『つまさきだちの日々』

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