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年の差54歳!『顔たち、ところどころ』は、チャーミングなアーティストコンビが贈る愛しいドキュメンタリー。

芸術の秋。ペルル読者にぜひおすすめしたいドキュメンタリー『顔たち、ところどころ』をご紹介。アニエス・ヴァルダとJR、年の差54歳の二人のアーティストが共同監督・出演した本作は、アート好きや映画好きならずとも、多くの人が楽しめること間違いナシ!

 

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016


 

 今回取り上げるのは、芸術の秋にぜひおすすめしたいドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ』です。9月15日(土)から公開の本作は、年の差54歳の二人のアーティストが共同監督・出演したロードムービー形式の作品。アート好きや映画好きならずとも、多くの人が楽しめる映画になっています。

 

アニエス・ヴァルダとJR。

二人のアーティストによるハートウォーミングなドキュメンタリー。

 

 本作で、フランス国内を旅しながら、各地に暮らす人々とアート作品を作るのは、二人のアーティスト。

ひとりは、“ヌーヴェルヴァーグの祖母”とも呼ばれる映画監督アニエス・ヴァルダ。『5時から7時までのクレオ』『幸福』などの作品を生み出した彼女は、女性映画監督の先駆ともいわれる存在。

 

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016


 

 もうひとりは、写真家・アーティストのJR(ジェイアール)。彼は、大都市から紛争地帯、さまざまな場所で、そこに住む人々の大きなポートレートを貼り出す参加型のアートプロジェクトで知られています。

 

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016


 

 同じ表現者として、互いの存在と作品を知りながらも、これまで会ったことがなかった二人。このドキュメンタリーは、そんな二人がフランスの田舎を旅しながら、旅先で出会う人々と交流し、作品を残していく様子を捉えています。二人が手掛けるアート作品は、フランス各地に暮らす人々の顔(ポートレート)を撮影した巨大写真を、建物や遺跡、廃墟などの壁に貼っていくというもの。JRの撮影スタジオ付きトラックに乗り込み、年の離れたチャーミングなアーティストコンビが旅を繰り広げます。

 

 

以下、ペルル読者に向けて、本作の見どころをピックアップしてご紹介!

 

54歳差のでこぼこコンビ。愛すべきキャラと、そのやりとりに注目。

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016


   

 まずは、祖母と孫ほど年の離れたアニエス・ヴァルダとJRのやりとり。アニエスは、年齢のせいで目が見えづらいのだと語ります。一方、JRはつねにサングラスと帽子を身に着け、素顔を見せようとしません。ぼんやりとした視界で世界を見つめる87歳(本作撮影時)のアニエスと、そんな彼女の“物の見え方”に、彼なりの軽やかで優しい態度で寄り添う33歳(本作撮影時)のJR。互いに刺激を与えながら作品を作る様子は、年齢もキャリアも越えた同志のよう。(二人がルーブル美術館を疾走するシーンは、一見の価値あり!)ひとりよがりではなく、尊重し合い共鳴する姿に、観ているこちらもワクワクしてしまいます。

 

フランス各地に暮らす、さまざまな人々との出会い。

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016


 

 もうひとつは、二人がフランス各地で出会う、市井の人々の姿。いわゆる“普通”の人々である彼ら、彼女らに話を聞くうちに、次々と鮮やかに浮かび上がるエピソードは、実体験に基づくその土地の歴史や記憶そのもの。一見すると“普通”に見えた人々の、思いがけないほどドラマチックな生き様が明らかになっていくのです。アニエスとJRは彼らの顔を撮影し、壁に貼り付けます。そうして、個人の心に秘められた物語が街の壁に大きく引き伸ばされ、掲示され、ときにはSNSで拡散され、市井の人々の人生に一瞬の光が当たる。この映画には、そんな感動的な瞬間がたくさん収められています。

 

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016


 

 例えば、今では寂れた炭鉱労働者の村にひとりで住む女性。彼女はアニエスとJRを前にして、炭鉱夫だった父の思い出を話します。そして、壁に大きく貼られた父のポートレートを見て、かつてここで働いていた仲間たちも、昔のことを語り始めるのです。

 また、ル・アーブルの港街では、港湾労働者の仕事場を舞台に、そこで働く男たち……ではなく、(アニエスの提案で)その妻たちの全身のポートレートを、高く積み上げたコンテナの壁に貼り付けていきます。じつは、この港湾労働者たちはストライキの真っ最中。そんな状況にもかかわらず、自分たちもアート作品に参加したいと、二人のプロジェクトに喜んで協力するのです。

 アート作品という形でスポットライトを当てられた人々の姿を見ていると、“その人の働き方=(イコール)生き方”なのだと改めて認識させられます。そして、アーティストの立場として、彼ら、彼女らを一方的に撮影するのではなく、交流や対話を重ねながら作品を作るアニエスとJRの姿勢もまた魅力的です。

 

映画ファンがさらに楽しめるポイントも。

 そして、映画ファンやアートファンがより楽しめるポイントも。映画のラスト、アニエスはJRを喜ばせようと、映画監督ジャン=リュック・ゴダールの家を訪ねます。え?どういう感じでゴダールが登場するの!?という期待と、ちょっとした緊張感が漂うなか、ゴダールが出した返答も見どころのひとつ。ほかにも、JRが写真を撮影し、足場を組んだりクレーンに載ったりして、職人のようにして建物の壁にポートレートを貼り付けていく工程は、アートファンにとって、見ているだけで興味深い映像ではないでしょうか。

 

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016


 

 この作品がすてきなのは、気取ったアートドキュメンタリーではなく、真摯で誠実で、たくさんの人々の笑顔や誇らしい表情があふれているところ。偶然の出会いを大切にしながらアートに取り組むアニエス・ヴァルダとJR。この映画で、二人はポティブな態度で人生と向き合い、さまざまな人々の生き方を肯定しているような気がします。二人のアーティストのことを初めて知るという人も、そんなにアートに興味がないという人も、明るい気持ちで笑って楽しめる作品です。ぜひ劇場でお楽しみください。

 

 

 

 

© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016

 

■『顔たち、ところどころ』(2017年/フランス)
2018年、9月15日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

脚本・監督・出演:アニエス・ヴァルダ、JR

http://www.uplink.co.jp/kaotachi/

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