検索

名セリフと味わう、大人女子的ジブリ映画案内 Vol.2『思い出のマーニー』

米林宏昌監督作『思い出のマーニー』をご紹介。心を閉ざした少女・杏奈の前に現れたのは、古い屋敷に暮らす金髪の少女・マーニーだった。美しいロケーションとファンタジックなストーリー展開で描く、少女の成長の物語。

 続いてご紹介するのは、スタジオジブリ制作、米林宏昌監督による『思い出のマーニー』です。2014年公開の作品ですから、多くのペルル読者にとっては、大人になってから劇場公開されたジブリ映画だと思います。

 

 舞台は北海道の田舎にある海辺の町。主人公・佐々木杏奈は、少し内気な12歳の女の子。ぜんそくの持病を持つ彼女はおとなしい性格で、学校ではクラスメイトたちから孤立しています。養母の頼子は、感情を表に出さない杏奈のことを、「あの子…いつもふつうの顔なんです」と心配し、その原因が血のつながらない親子関係にあるのではないかと悩んでいました。夏休みの間、この海辺の町にある親戚の家に、療養をかねて滞在することになった杏奈。そこで彼女は、不思議な少女・マーニーと出会うのですが…。

 

 

『思い出のマーニー』(米林宏昌監督/2014年公開)

© 2014 Studio GhibliNDHDMTK

 

★印象的な名セリフ「私は私がキライ」「あんたはあんたのとおりに見えてるんだから」

 本作の特徴のひとつは、主人公の女の子・杏奈が、おとなしくて少し影のあるキャラクターだということ。どちらかというと、明るくて活発なヒロインが多い印象のジブリ映画のなかでは、異色です。学校では同年代の女子に上手くなじめず、家庭では養母との関係に悩む彼女。冒頭で「私は私がキライ」と語る杏奈のモノローグは、触れるものすべてを傷つけてしまいそうな、思春期の繊細な心情を表しています。そして、もうひとつのセリフ「あんたはあんたのとおりに見えてるんだから」は、杏奈が言い合いになった女子から投げ掛けられるキツイひと言。思春期の自意識過剰さから、自分を肯定できない少女の葛藤が、痛いほど伝わってくるセリフです。

 

夢と現実が入り混じるファンタジックなストーリー展開

 北海道の田舎にやって来た初日、杏奈は部屋のバルコニーから美しい湿地を見渡し、この風景をひと目で気に入ります。絵を描くのが大好きな彼女は、湿地でスケッチを楽しみます。ふと見渡す先に、古い西洋風の屋敷を見つけた杏奈。何度かスケッチに出かけるうちに、この屋敷に暮らすひとりの少女と出会います。かつて外国人の別荘だったという屋敷に、今は誰も住んではいないはずなのですが、杏奈は「マーニー」と名乗るその少女と交流を深めていきます。夢と現実の境界があいまいな展開ゆえに、杏奈とマーニーの交流シーンは、現実離れしたファンタジックな美しさに満ちています。それは、大人になる前の少女が、心の奥に深く下りて行き自分と向き合う、そんな心象風景を表現しているかのよう。夢に出てきたのとそっくりな少女=マーニーの正体とは?という問いは、杏奈の生い立ちとともに、映画の最後で明かされるため、ここで詳細に触れるのは避けておきます。しかし、結末を知った後でも、本作は観客さまざまな解釈の余地を残しているように思えます。あの夜、出会ったマーニーの姿は、こうなりたいと憧れる自分の理想像の投影でもあるのかもしれないと…。

 

種田陽平による映画美術が物語を彩る

 また、細かいところまで描き込まれた映画美術も、見逃せない要素のひとつ。本作の映画美術を務めたのは、日本のみならず世界で活躍する美術監督・種田陽平氏。杏奈が暮らすことになった家の、手作り感あふれる内装や外観。マーニーが暮らす石造りの西洋風屋敷の造形、壁に飾られた雑貨ひとつをとっても、物語を理解する手助けとなってくれます。

 そして、マーニーと杏奈が出会う、夜の湿地の風景。月明りに照らされた海でふたりがボートをこぐシーンは、静謐で本当にきれいです。作品全体のテーマと世界観を凝縮したこのシーンは、まさに作品の肝。普段人には見せない心の傷や、自己の内面と向き合う作業は、時に孤独を伴う。それでも最後には明るい表情で未来を見つめる杏奈の姿は、あなたにどう映るでしょうか。

 

【DVD発売情報】

 

 

『思い出のマーニー』(米林宏昌監督/2014年製作)

【発売元】 ウォルト・ディズニー・ジャパン
【価格】4700円(税別)

© 2014 Studio GhibliNDHDMTK

Share
はてなブックマーク

COLUMN

関連記事

おすすめ記事

Follow us!
Follow us!