理不尽な現実を乗り越えて

物語の舞台はチリ、サンティアゴ。ウェイトレスをしながらナイトクラブで歌っているマリーナは、年の離れた恋人のオルランドと暮らしていた。マリーナの誕生日を祝い、仲睦まじく幸せを迎えた夜、自宅のベッドでオルランドが突然亡くなってしまう。マリーナは最愛の人を失った悲しみの最中にも、自身がトランスジェンダーということから、不躾で容赦のない差別や偏見を浴びせられる。オルランドの息子にふたりで暮らしていた部屋から追い出され、オルランドの元妻からは葬儀に参列させてもらえない。マリーナにとって、ただ愛する人に最期のお別れを告げたい、それだけが唯一の望みだったのだが―。
世界が注目するニューカーマー、ダニエラ・ヴェガ

ヒロインのマリーナを演じるのは、自身もトランスジェンダーの歌手であるダニエラ・ヴェガ。女優として新たな一歩を踏み出している注目の逸材です。8歳でオペラ歌手としての才能を認められ、高校卒業後はヘアスタイリストとして働く傍ら、地元の劇団で演技をスタート。2014年に著名なソングライターのマヌエル・ガルシアのビデオクリップに登場するなど、存在が話題になりました。
2017年には演劇「Migrantes」でテアトロ・ア・ミル国際演劇祭の最高賞のひとつに選ばれ、また本作『ナチュラルウーマン』 では驚くべき才能を開花させ、トランスジェンダーの女優として初のオスカーにノミネートされるなど、世界で脚光を浴びています。
逆境に負けず、まっすぐに生きる美しきヒロイン

差別や偏見。嫌がらせを受けて、時にはへこたれそうになっても、理不尽な現実への怒りはパンチングボールにぶつけ、道しるべのようにゴーストになって現れるオルランドに励まされながら、すっと背筋を伸ばして凛々しく立ち上がるマリーナ。
逆境に負けずに自己を肯定しながら前進しようともがくヒロインから、自分らしく生きたいと願う全ての人への贈り物とも言える人生賛歌の物語。愛する人にきちんとさよならを伝えるための健気な闘いに挑む彼女に、観る者はいつの間にか共感を覚え、幸せを祈りながらエールを送ってしまうことでしょう。
【情報】
2018年2月24日、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
監督:セバスティアン・レリオ
出演:ダニエラ・ベガ、フランシスコ・レジェスオルランド、ルイス・ニェッコガボ
配給:アルバトロス・フィルム