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仕事道具のテンプレートから、お菓子の包み紙まで乙女な文房具探しがたまりません。【私のmono 前編:小林エリカさん】

新連載【あの人の仕事とモノ】が本日からスタート。 最初にご登場いただくのは、作家・漫画家・アーティストとして幅広く活躍する小林エリカさん。 昨年末から年始にかけて、美術館では初めてとなる個展「Trinity(トリニティ)」を成功させ、これからの活動にも注目が集まる彼女。 そんな小林さんが愛してやまないアイテムをまずは教えてもらった。

 
文房具コレクションの一部。右上から時計回りに、ベトナムのバラの切手、香港のキャンディの包紙、王冠模様のキャンディの包紙、ポルトガルのおみやげでいただいたピック、ユニークな形のオブジェはアメリカで発見、ビビットなバラのカードは上海のもの。


 

気づけば収集しているモノは、文房具だけでした。

現在小林さんの仕事場は、友人のオフィスの一角にある。

きれいに整頓された机の下には、「文房具トラベラー」と書かれたボックスが。

雑誌の連載で文房具愛を語っている小林さんらしく、その箱の中には文房具がぎっしり。

そこでまずはこんな質問から。好きな文房具ベスト3は?

 

「1位は、ダントツでテンプレートです。

アルファベットや数字をかたどった文字モノを中心に集めていて、私の作品にも多く使っている相棒です。

第2位が紙ですね。私がいつも使う好みの紙はもう決まっていて、日本生まれの〈LIFE(ライフ)〉のバンクペーパーか、アメリカ〈クレイン〉社のコットンペーパー。

あと、和紙がすごく好きで。作品にも和紙を使うんですが、Gペンで描いたときの滲み具合や、インクがポタリと落ちた感じも気に入っています。

そして第3位なんですが、好きすぎてなかなか決めきれられず(笑)。

ペン、特に水性ペンやGペンも好きですし、スクリーントーン(注:漫画の画材で色の濃淡や背景などに用いられる)も……。

(しばらく悩んで)決めました! 第3位は顔料絵の具にします。金銀の光る色が特に好きなんです」

 

小林さんのデスク。机の上には、文房具類を入れている棚と作品のみという潔さ。収集中の文房具の一部は、足元のバンカーズボックスの中に大切に保管されている。


 

小林さんのテンプレートコレクションの中から、最近お気に入り3種をセレクトしてもらった。使い込んだインクのシミから、その愛が伝わってくる。


 

自他共に認める、テンプレートラバー!

一番好きな文房具は? の質問に、すかさず「テンプレート!」と答えた小林さん。

テンプレートとは、正しい図を書くための文房具のことだ。

プラスチックの板に型どられた図形をなぞるだけで、円や記号、数字やアルファベットを正確に描くことができる。

 

「テンプレートを好きになったのは大人になってからで、いつの間にかこんなに集まっていました。

イギリスの『Helix(ヘリックス)』という文房具メーカーのモノが多いのですが、どれもいろんな旅先で見つけて集めてきたものなんです。

日本の100円ショップでもいくつか見つけました。

あと、私がテンプレート好きなことを知られていて(笑)、周りからいただくことも。

ただ最近では数が少なくなっていて、文房具界の絶滅危惧種になりつつあるのが少し悲しいですね。

よく使うモノにはインクがついて黒ずんでいますが、そんなところにも愛着が湧いていて。

綺麗にもできるんですが、この感じもなんかだかいいなと思ってそのまま使っています」

 

 


写真左:友人からの年賀状。干支のうさぎをデザインしたユニークなテンプレートだ。

写真中:オランダで購入した特大の品。数字からアルファベットまで一式揃う。

写真右:『Helix』社の赤いテンプレートとアメリカで見つけた一品。

 

小林さんのテンプレートコレクションは、手のひらサイズから、日本ではあまり目にすることのない大きなモノまで、専用の箱がいっぱいになるほどの量。

一見同じように見えるテンプレートも、数字やアルファベットに様々なフォントが使われていて眺めていて飽きない。

これが文房具の面白さなのかもしれない。

 

そして、なんと好きが高じてテンプレートを作ったことも!

 

「私も参加しているkvina(クビーナ)というクリエイティブユニットで2011年に『CLASKA Gallery&Shop “DO”(クラスカ ギャラリー&ショップ ドー)』さんと一緒に製作しました。

バレンタインに合わせて、エスペラント語(注:人工的に作られた世界共通語)で〝好き〟を書けるラブレター・テンプレートを作ったんです。

テンプレートは、また作ってみたいアイテムですね」

 

制作に関わったテンプレート。日本語、英語、エスペラント語でラブレターを贈れるようになっている。


 

旅先でときめきの文房具探し。

漫画家・作家という仕事柄、文房具は大切なパートナー。

それゆえ、文房具選びに対する想いもひとしおだ。

 

「仕事で使っている文房具は、どういう画材を使ってどんな風に描こうかと考えているうちに、極まったアイテムたち。

使うものはもう定番化しているので、『伊東屋』『世界堂』『東急ハンズ』をぐるぐるまわって、欠かさないようにしています。

でも、それは仕事用の文房具の話。それ以外の趣味で集めている文房具は、旅先の文房具屋さんで探すことが多くて。これが私にとって、大きな楽しみなんです。

そもそも旅先で本屋さんへ行くのが好きで、そこで文房具を売っていることも多いし、スーパーの文具売り場をまわったり、フリーマーケットやスリフトショップなどでみつける古いモノも好きですね

 

例えば、キャンディの包紙や空箱、ピックなども、小林さんにとっては愛すべき文房具になる。

彼女と同じように、素敵な包紙や雑貨にときめいてつい集めてしまうという人も多いはず。

 

「実は、高級な文房具にはあまり興味はないんです。

だから、私が集めているモノは高くないことが前提。普段、何気なく使えるような文房具が好きですね。

危うく捨てられそうなモノの中から素敵なモノを見つけられた瞬間は、すごくテンションがあがって嬉しくなります

 

小林さんの目利きが光った戦利品のレースペーパー。多くはアメリカのスリフトショップで購入。


 

「以前アメリカのスリフトショップに立ち寄ったとき、古いレースペーパーがたくさん出ていて。

その中から、繊細なカッティングの品を選んで持ち帰りました。

特に手前中央の四角いレースペーパーは、ある商品の下に敷いてあったものなんですが、このレースペーパーがどうしても欲しくてその品を買ってしまいました(笑)」

 

海外で見つけた文房具ばかりかと思いきや、実は日本の古道具も。

なかには家族から受け継いだ品もある。

 

古いスタンプたち。活版のように、自分で文字を組み合わせて使うことができる。


 

「もともとスタンプも好きで集めていたのですが、キリがないので厳選した一部がこちら。

左下の木箱に入ったスタンプは実家でみつけたモノで、おそらく父が所持していたのだと思います。

上段の中央のスタンプも、日本で作られていた年代物ですね。

日本の文房具もかわいいデザインのモノがたくさんありますよね。特に紙モノなんかは、そのクオリティの高さにいつも感動しています。

他にもいただいたお菓子の空箱や、祖母が持っていたり、プレゼントに結ばれていたりしたリボンだったり。

文房具コレクションのなかには、色んな方たちからいただいて手にしたモノもたくさんあるんですよ」

 

リボンのストックは大きな瓶の中に。


 

ここまで文房具を愛する小林さんなら、ライフスタイルに関するモノにもこだわりがあるはず!

けれど、返ってきたのは意外な答えだった。

 

「単に文房具が好きなだけで、モノに対するこだわりは特にないんです。

おしゃれになりたいとは思うし、憧れるけれど、ファッションやインテリアとか、全然わからなくて。

洋服とかも同じものを10年、20年とできれば着たいような感じです(笑)。

 

実は、文房具屋さんと本屋さん以外、あまりお店に買い物には行かないんです。

店員さんに話しかけられることに緊張しちゃって、苦手なんです。

だから洋服も生活用品も、ネットショップで注文することがほとんどですね。

だから、いつも靴のサイズが合わなくて返品したり(笑)。

試着とかも、ドギマギしてできないんですよね。

 

でも、文房具屋さんって話しかけられることがないですから!

自分が欲しいものが集中して買えるので、そんなところも私に合っているのかもしれません」

 

文房具に対する見事な偏愛ぶりをみせてくれた小林さん。

来週は、小林さんがこの世界に入るきっかけになった本から、彼女が憧れる女性像。

そして、育児をしながらの働き方など、彼女の仕事についてクローズアップします。

ぜひ、来週もお楽しみください。

 

 

【Profile】

小林エリカ(こばやし・えりか)

作家・漫画家・アーティスト。

著書に、アンネ・フランクの日記と実父の日記をモチーフにした小説『親愛なるキティーたちへ』(リトルモア)、小説『彼女は鏡の中を覗きこむ』(集英社)など多数。

今年の春には、第27回三島由紀夫賞候補、第151回芥川龍之介賞候補になった小説『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)の文庫が発売に。

連載も多数で、現在WEB『MilK JAPON』では「おこさま人生相談室』、雑誌『&Premium』では「文房具トラベラー』を担当中。

放射能の歴史をめぐるコミック『光の子ども』は、リトルモアWEBで不定期連載。コミック本『光の子ども1,2』(リトルモア)も発売中。

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