検索

「カゴメビルから古き良き百貨店まで。なごやの昭和なまちなかをご案内」【甲斐みのりの隙間の時間】

雑誌やwebメディア、書籍など、様々な場所で活躍する文筆家、甲斐みのりさんによる日々の気づきを記したエッセイです。

 名古屋のまちなかを舞台に、さまざまなプログラムが繰り広げられる「やっとかめ文化祭」。

私も「名古屋てくてく和菓子めぐり」という企画の案内役として参加させていただいた。

自分の企画以外にも、やっとかめ文化祭に参加するため名古屋へ赴き、菓子問屋街を巡るまち歩きツアー「嫁入り菓子から駄菓子まで 昭和レトロなお菓子がいっぱい」を体験。

菓子工場を見学したり、金平糖博士の話を聞いたり、最後は駄菓子問屋街で名古屋メイドの駄菓子を買い込み、ほくほく。2011年に出版した『なごやのたからもの』(リベラル社)のコーディネートをしていただいたTさんも、同じくツアーに参加していたので、全ての行程が終了したお昼過ぎから、『なごやのたからもの』取材時の6年前に舞い戻り、ともにまちなかを歩くことに。

 『なごやのたからもの』では、「ときどき、道々、立ち止まってみれば、名古屋のまちなか、美術館」と題し、名古屋のまちじゅうに点在する、陶板やモザイクの壁画を紹介している。もともと私が壁画好きだったこともあったのだけれど、偶然まちなかで壁画を見つけて足を止めて写真を撮っていると、「あまりに日常の風景過ぎて、そんなに意識したことがなかったけれど、そういえば名古屋には壁画がとても多い。たしか、あそこにも……」とTさんによる壁画案内が始まった。

 壁画の多くは、岐阜県で大理石商を営む家庭に生まれ山口薫や浜口陽三らと同時代に活躍した洋画家・矢橋六郎によるもの。原画のいくつかは、静岡出身の洋画家・北川民次も手がけている。当時、名古屋の交通局にも問い合わせて詳細を聞いたところ、名古屋は、多治見や瀬戸など陶器の産地に近いこともあって、日本の伝統美を守る窯とともに、まちの景観が築かれたことを知る。

 Tさんは少し前に、やっとかめ文化祭の、モザイク壁画を巡るツアーに参加していて、『なごやのたからもの』では撮影していなかった、カゴメビルや名古屋中央教会を訪れたという。さらに言えば、これまで何度も何度も、壁画を見るため足を運んだ中日ビルや、丸栄百貨店の取り壊しが決まったそうで、いつ見納めになるか分からないからと、壁画巡り。カゴメビル→名古屋中央教会→中日ビル→丸栄スカイル→丸栄→名古屋三越 栄店の屋上。その後、喫茶店の『ライオン』と『ボンボン』をハシゴ。

お互いあの頃から年月は重ねているけれど、好奇心だけは変わらないねと、喫茶店でよく働いてくれた足をさすりながら、笑いあった。


カゴメビルの壁画。昭和37年の設置で、原画は北川民次。

トマトジュースの会社らしく、壁画にはトマトを収穫する様子が描かれている。


明治33年、栄の中心に建てられた名古屋中央教会。原画・製作は、古川秀昭。世界中の大理石が使われている。


中日ビルの正面玄関を入ってすぐある天井壁画。

昭和41年、矢橋六郎によるもの。取り壊しが決まってから、合わせて原画も展示するようになった。


中日ビル天井画の原画。「夜空の饗宴」というタイトルで呼ばれている壁画。原画には「大空の饗宴」と別のタイトルが付けられていた。


「丸栄スカイル」のエレベーター脇にも、愛らしい陶芸作品。


名古屋の老舗百貨店「丸栄」は、建築家・村野藤吾によるもの。

現在の建物は取り壊され、2020年に新しい商業施設が完成する予定。

今のうちにぜひ昭和の名建築を。


「丸栄」には、東郷青児画のエレベーターが残されている。運転はしていない。


昭和31年「名古屋三越 栄店」の屋上に設置された観覧車。現存する屋上観覧車としては国内最古で、登録有形文化財に指定されている。現在運転はしておらず、見学のみ可能。


『なごやのたからもの』(グラフィック社)


『なごやのたからもの』より。矢場駅地下街の壁画を紹介したページ。


『なごやのたからもの』より。こちらは名古屋駅地下の壁画。

Share
はてなブックマーク

関連記事

おすすめ記事

Follow us!
Follow us!