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姉妹の青春が私たちの心をくすぐる『夏をゆく人々』。 多感な少女のひと夏をみずみずしく描く【お勧めの名映画】

イタリアはトスカーナ地方を舞台に描く、ある家族のひと夏の物語。暑かった夏を思い出しながら観たい名作を秋の夜長にいかが?

 

 冬というにはまだ少し早い季節ですが、寒いと感じる日が増えてきたこの頃。そんな季節にもかかわらず、今回あえてご紹介したい作品は『夏をゆく人々』です。


 物語の舞台は、イタリア中部のトスカーナ州周辺。人里離れたこの土地で、昔ながらのやり方で養蜂業を営む家族。父と母と4人の娘、そして一家に身を寄せるひとりの女性が寄り添いながら生活している。頑固な父・ヴォルフガングから養蜂業の手ほどきを受け、一家の仕事の重要な担い手として働く少女・ジェルソミーナ。本作は、4人姉妹の長女であるジェルソミーナの視点から、この家族のひと夏の出来事を綴った作品だ。

 

 

主人公は、家族で養蜂業を営む一家の長女・ジェルソミーナ


 

 一家は生業である養蜂を中心に自然のリズムに従って暮らしている。晴れた日にはまぶしい陽光の中、庭の野菜を収穫したり、あるときは暴風雨の中、ハチの巣箱が飛ばされないように守ったり……。防護服を着て行うハチの管理や撹拌機でのハチミツ抽出など、同じ作業を繰り返しながら、生活の糧を得る日々。
 ある日、父と妹たちと一緒に湖水浴に出掛けたジェルソミーナは、テレビ番組「ふしぎの国」のロケにやってきた撮影クルーに遭遇する。初めて間近に見るテレビの撮影現場。豪華な衣装に身を包んだ芸能人。ジェルソミーナは一気に心を奪われ、この番組が主催するコンテストに参加して自分たちのハチミツを宣伝しよう!と盛り上がる。しかし、父は大反対。テレビ出演を頑なに認めようとしない。ジェルソミーナはテレビ出演に向け、オーディションに応募したいという気持ちを諦め切れず……。そんな折、少年更生プログラムの一環として、14歳の少年を預かることになり、家族の平凡な日々にさざなみが立ち始める――。

 

 

 

一家はイタリア・トスカーナの片田舎で自然とともに暮らしている 

 

 本作の見どころのひとつは、一家が暮らすイタリア片田舎の風景の美しさ。そして、そこに暮らす人々の飾らない自然体の姿である。例えば、主人公の少女・ジェルソミーナのファッションは、いわゆる都会的で洗練されたものではない。とてもラフな格好にもかかわらず、劇中で見せる彼女のファッションは可愛らしくて魅力的だ。同じく、ジェルソミーナの妹たちや母親の格好も飾り気がなく、それがいっそう自然とともに暮らす生活者としての美しさを引き立てる。

 

 

 

 



 さらに特筆すべきなのは、主人公・ジェルソミーナをはじめとするキャラクターの巧みな人物描写だ。大人になる一歩手前、多感な時期を過ごすジェルソミーナの姿を見て、自身の思春期を重ね合わせる観客もきっと多いはずだ。愛にあふれながらも感情表現が不器用で、何かとすれ違ってしまうジェルソミーナと父親との関係性には、思わず胸がキュッと締め付けられる。そして、ジェルソミーナと一番年の近い妹・マリネッラとの複雑な感情のやりとり。普段は外の世界への憧れを共有する仲間であるかと思えば、あるときは子ども染みた態度にいら立ち、突然妹を叱りつけたりしてしまう。このあたりの描写は、女兄弟のいる人にとっては、かなり共感できるのではないだろうか。幼い頃から暮らしてきた田舎から、いずれは別な世界へと旅立っていくであろう少女。この映画は、そんな少女と家族たちが過ごしたひと夏の日常を細やかに描いている。

 

 

 

イタリアを代表する女優、 モニカ・ベルッチの役どころにも注目


 

 メガホンをとったのは、イタリアの女性監督、アリーチェ・ロルヴァケル。長編2作目となる本作で卓越した才能が高く評価され、2014年の第67回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。次作への期待もおのずと高まる。ちなみに、ジェルソミーナの母親役を演じたアルバ・ロルヴァケルは、監督の実姉だそう。このほか、ちょっとだけ出てくる登場人物も見逃せない。更生プログラムでやって来る少年・マルティンの存在感は抜群で、彼の素晴らしい特技には心をつかまれる。そして、劇中のテレビ番組「ふしぎの国」の司会者を演じているのは、イタリアを代表する女優、モニカ・ベルッチ。カツラをかぶり、キラキラしたドレス(というよりコスプレという言葉がふさわしい?)を身にまとった彼女の姿は、映画好きならずとも必見。特異なキャラだが、主人公に影響を与える重要な役どころなのである。  

……と、まだまだ語りたいことはたくさんありますが、 とにかく一度観てこの映画の世界に浸っていただきたい!そんな作品です。

 

 

 



 

 

『夏をゆく人々』 ■監督/アリーチェ・ロルヴァケル ■DVD 販売:ハーク © 2014 tempesta srl / AMKA Films Pro ductions / Pola Pandora GmbH / ZDF/ RSI Radiotelevisione svizzera SRG SSR idée Suisse



text:Yuka Tamura

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